空飛ぶ車をトヨタが作る!?400億円投資の本当の狙い

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2020年の1月にトヨタが空飛ぶ車に約400億円を投資するというニュースが発表されました。
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「えっトヨタが空飛ぶクルマ?」と感じる方もいるかもしれません。

今回は、「空飛ぶ車」とはどういう車なのか、ということからトヨタが参入する本当の狙いについて解説していきます。

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空飛ぶ車にトヨタが参入ってどういうこと?

空飛ぶ車をトヨタが作るってどういうこと?

トヨタは2020年1月に米国のカリフォルニア州を拠点とするJoby Aviationという会社に433億円を投資すると発表しました。
このJoby Aviationは「eVTOL」と呼ばれる垂直に離着陸できる乗り物を開発している会社です。
上の写真がJoby社が開発している機体ですが、見ての通り人が乗れるドローンであって、トヨタが作ってきた自動車とは似ても似つかないことが分かります。

トヨタの発表では、今回の提携で出資だけではなく、自動車開発において培ってきた設計、素材、電動化と言った技術を生産技術の見地から提供、さらにトヨタ生産方式のノウハウも供給するとしています。
また、トヨタ自動車副社長であり、Gazoo Racingカンパニーのプレジデントである友山茂樹氏をJoby Aviationの取締役として派遣することも発表しています。

なぜ自動車メーカーであるトヨタがこれほどまでに「空飛ぶ車」つまり有人ドローンを開発する事業にこれほどまで力を入れるのでしょうか?

空飛ぶ車に参入するトヨタの狙い

空飛ぶ車に参入するトヨタの狙い

ここにはトヨタが自動車の次に見据えている次世代モビリティの姿が背景にあります。

現代において、電車やバスといった公共交通機関、マイカー、飛行機という大きく分けて3種類の交通手段がありますが、この次の世代の交通機関とされているのが空のタクシー、つまり空飛ぶ車であるeVTOLを用いた移動サービス事業です。

実は、大規模にこの空の移動サービス事業を展開しようとしている会社があります。Uberです。

Uberは2023年に「UberAIR」という空を活用した商用サービスを本格的にスタートしようと計画を進めています。
配車サービスのシェアでトップを走るUberですが、彼らはサービス事業者ですから機体は開発できません。

そこで、このUberAirに用いるためのeVTOL機体開発について、各メーカーとパートナーシップを次々と組んでいます。
トヨタが出資したJoby Aviationの機体も、UberAIR参画を目指して開発を進めています。

トヨタは2018年のCESで、自動車メーカーから「モビリティカンパニー」へのモデルチェンジを宣言しています。
タイヤが4個ついている自動車を作る事業から「人を移動させる」という広い意味でのモビリティプロバイダに変革しようとしているのです。

そういった意味で、空を活用した第4の交通機関に進出するのは必然とも言えるでしょう。

また、欧州のフォルクスワーゲン、アウディ、ダイムラー、アストンマーティンと言った自動車メーカーも他のメーカーとパートナーシップを組んで空飛ぶ車の開発に参入しています。
2020年台、空のモビリティ開発競争が熾烈になることは必至かもしれません。

空飛ぶ車がもたらす移動イノベーションとは?

空飛ぶ車でトヨタが展開する事業とは

では、空飛ぶ車が新しい交通機関になると、どんなメリットがあるのでしょうか?
これは、シンプルに「早い」ということです。

少し想像してみてください。
「車が空飛んだら良いのになぁ」と感じるのはどんな時ですか?

おそらく、多くの人が渋滞に巻き込まれた時と答えるでしょう。

UberAIRが目指しているのはまさにこういった渋滞が慢性的に発生する都市部において、短距離・高速・高頻度の交通手段としての用途を最優先に進めています。

例えば、新宿のオフィスから成田空港へのアクセスは電車、マイカーいずれも1時間以上かかります。
しかし、Joby Aviationで開発している空飛ぶ車の最高速度は300km/hを超えており、半分以下の時間で行けることが期待されます。

駅や路線といった公共交通機関のインフラに縛られず、高速道路の渋滞にも縛られない。
発着場があれば、何よりも高速でそこに行くことができる、未来の交通機関といえます。

空飛ぶ車を実現するための課題

渋滞に左右されず、どんな交通機関よりも早く目的地にたどり着ける空飛ぶ車ですが、まだ乗り越えなければならない課題があります。

大きく分けて下記の3つがあると考えられます。

  • 安全性
  • 収益性
  • 騒音

安全性

これが一番気になる部分ではないでしょうか?
本当に安全なのか。

トヨタや自動車メーカーが参入するのは、実際のところこのノウハウが一番多い業界だからという意味合いが強いかもしれません。
自動車はプロでない一般人が扱う機械であり、さらに何かミスがあると大怪我や最悪人が死ぬ可能性があります。

例えば、スマホが突然電源落ちてもユーザーは無傷ですが、クルマが高速道路を走行中に止まったら事故が起きますよね?
こういったことが無いように、自動車の各装置には何重にも安全設計がされています。
さらに、目に見える不具合が起きていなくても、内部で何かのセンサーが故障していれば、それを検知して知らせるなどの機能も網羅されています。
これは故障診断と呼びますが、万が一何かの不具合があってもいずれも最悪の自体が起きる前に対処できるような仕組みが備えられています。

これが空飛ぶクルマになったら、なおさら止まってはいけません。
電源系統や信号の系統を2重にするとか、ローターが2つ停止しても飛び続けられるとか、そういった安全のための規格の策定が急ピッチで進むのではないかと思います。

収益性

2つめは、空飛ぶクルマを使ったサービスがビジネスになるのか?という点です。

参考までに、アメリカなどで自家用に用意されているヘリコプターは大体5000万円〜という価格帯です。
観光やイベントなどでチャーターする場合、20万円〜くらいが相場だと思います。

UberAIRとして運用する場合、充電やスペアなども合わせると路線ごとに多くの機体が必要になるでしょうから、いかに機体単価を下げられるかという点が重要になります。

そこに、トヨタの生産技術が生きてくるのではないでしょうか。
すなわち、高品質を維持しながら早く大量に組み立てることで1基あたりのコストを下げることが可能になります。

機体単価が下がれば、利用する際の単価が下げられるだけでなく、UberAIRにとっても機体を増やすことで安定した運用が可能になります。

導入当初はエグゼクティブ向けのサービスになると思われますが、路線が増えて一般の方でも気軽に乗れるサービスになると良いですね。

騒音

3つ目の課題は騒音です。
空飛ぶクルマとして計画されている有人ドローンは一つあたりのプロペラが小さく高速で回転させるため、ヘリコプターのバタバタ音とは異なった音になることが予想されます。
街中での運用を想定しているため、各メーカー共に騒音の低減は大きな課題として対策を進めています。

特に、プロペラが発生する特有の低周波音は、風力発電でも問題になっているように人体への影響があるだけではなく、遠くまで減衰せず届いてしまうため対策に苦慮しているようです。

こういった課題がまだまだ多い空飛ぶ車ですが、特に都市部の交通を大きく変革させるポテンシャルを秘めています。
法規制やルールの整備は必要ですが、実用化が楽しみですね。