アウディA8の自動運転は、少しだけ早すぎた

トピック 自動運転

アウディA8は、世界初の自動運転レベル3を搭載したクルマとして発売される予定でした。

この記事では、2018年に発売したアウディA8の自動運転機能について
「なんで採用されなかったの?」
「いつになったら実用化されるの?」
といった疑問について解説します。

目次はこちら

アウディA8の自動運転に備わっている機能

引用:アウディジャパンHP

2017年のアウディサミットにて2018年に発売される新型A8が発表されました。
アウディジャパンのリリース資料によると「市販モデルとして世界で初めての高度な自動運転システムが設定される」と書いてあります。

ここで発表されたのは、以下の3つの機能です。

  • パーキングパイロット
  • ガレージパイロット
  • トラフィックジャムパイロット

上記のうち、トラフィックジャムパイロットという機能が自動運転レベル3と呼ばれる次世代の自動運転機能です。

レベル3は簡単に解説すると、ある限定された条件下でのみクルマが自動で走行し、その間ドライバーは別のことをすることができるレベルの自動運転機能です。
ですが、一定条件から外れる場合はドライバーはすぐに運転できる状態をキープしておかなければなりません。

レベル2までは厳密には「運転支援」という位置付けで、レベル3からが「自動運転」と定義されています。

自動運転レベルについての詳細はこちら

トラフィックジャムパイロット

アウディのトラフィックジャムパイロットは、

  • 高速道路もしくは中央分離帯とガードレールなどが整った、片側二車線以上の自動車専用道路であること
  • 速度が時速60km以下で、前後を走る車両との距離が詰まった渋滞状態であること
  • 車載センサーの検知範囲に交通信号も歩行者も存在しないこと

において、ドライバーの代わりにクルマが自律的に走行する。

という機能です。

さらに、車内のカメラが常にドライバーの状態を監視しており、まぶたが一定時間閉じていたりするとドライバーに対して警告を発生し、運転の交代を促します。
しかし、この記事を書いている2020年1月現在でも、アウディA8にこの機能は実装されていません。

アウディA8の自動運転はなぜ採用されなかった?

理由は1つ。
各国の法整備が間に合わなかったためです。

自動車というのは誕生して150年、ずっと運転手が操作することで、初めて動く乗り物でした。
そのため、道路を走行する上でルールを取り締まる場合、必然的に運転手の行動を取り締まれば良いことになります。

しかし、自動運転レベル3については、運転手が運転操作を何もしていなくても、クルマが勝手に走ったり、曲がったり止まったりします。

何も起きなければ問題ありませんが、仮に事故が起きた場合に誰が責任をとるのか、という問題が解決しなければ法律が整備できません。

日本においては、警察庁が2020年1月の通常国会で自動運転の取締りに関する道路交通法の改正案を提出しました。
この改正では、自動運転の機能を「自動運行装置」と定義し、これがON、OFFとなっている状態を記録するための記録装置の取り付けが義務付けられることになっています。

改正道路交通法は2020年5月までに施行される予定であり、このタイミング以降にモデルチェンジをした車両にはトラフィックジャムパイロットが実装されることが予想されます。

アウディA8ってどんなクルマ?

アウディA8ってどんなクルマ?1994年モデル 初代A8

では、世界初の自動運転を搭載したクルマになるはずだったA8とは、どんなクルマなのでしょうか?

アウディの頂点

アウディにおけるA8は、全てのラインナップの頂点に立つ存在です。

そして「Vorsprung durch Technik 〜技術による先進〜」というキャッチコピーを掲げているアウディの頂点にあるべき姿として、2018年にモデルチェンジを迎えたA8には自動運転の採用が最も適した存在だったのです。

自動車の開発というのは、約3年前から大枠の機能や仕様などは決めているので、2018年には法律も改正されているだろう、と踏んでいたのではないかと思います。

もしくは、フライング気味に出すことで「法整備よりも先に技術が完成した」というアピールの目的があったのかもしれません。

アウディのネーミング

アウディのクルマのラインナップは「アルファベット+数字」という分かりやすい組み合わせとなっています。

「A8」はそれぞれ

A・・・セダンやハッチバックといった一番メジャーなモデル
8・・・最上級

つまり、最上級のセダンという位置付けという意味が込められています。

最近はラインナップの拡充により、Qで始まるSUVのモデルがQ2〜Q8まで揃っており、それぞれ上位のスポーツモデルであるS、SQシリーズや、さらにその上のスポーツモデルであるRS3、RS4、RS6などがあります。

数字については基本的にメルセデスやBMWといった他のブランドとも似ているネーミングとなっています。

アウディの自動運転開発


最後に、アウディの自動運転開発について少し解説してみたいと思います。

アウディは以前から AIや自動運転といった領域の研究開発を進めており、その実証に向けて様々な挑戦を続けてきました。

北米においては2013年から公道におけるテスト走行が認可され、トラフィックジャムパイロットの試験を続けており、その後も本国ドイツや上海など様々な都市部においてデータを収集しながら完成度を高めてきました。

その中でもアウディの自動運転における技術力が世に知れ渡ったのは2015年です。
ドイツの最高峰レースである、ドイツツーリングカー選手権DTMの最終戦のイベントにて、無人のスポーツカーをサーキットでプロのレーサーと遜色ないタイムで走行させました。

その時の様子がこちら

これによって、渋滞などの限られた速度域だけではなく、より高速域でクルマの姿勢が乱れるような領域でもAIを活用することによって、精密な操作が実現できることが証明されました。

これだけ多くの実地試験の積み重ねや、サーキットでの走行デモをこなしてしまうほどの高い技術力があれば、法律の改正よりも早く自動運転レベル3の機能を実装してしまうのも納得です。

2020年の改正によって、多くのメーカーが自動運転レベル3の機能を実装して発売することになると思いますが、さらにその先のレベル4時代に向けてアウディの進化が楽しみです。