【解説】自動運転 レベルの違い 〜ポイントは3つ〜

自動運転

「自動運転のレベルって何?」
今回はそんな疑問にお答えします。

目次はこちら

自動運転のレベル

自動運転のレベル
自動運転の「レベル〜」という表現は、米国の標準化団体であるSAEが策定したものが現在の共通認識になりつつあります。

出典:SAE “Levels of Driving Automation”(英語)

これは車両の自動化度合いをレベル0〜レベル5の6段階で分類したものになります。

ざっくり解説すると下記の通りです。

レベル0・・・全て手動、もしくはアシストのみ。
レベル1・・・加減速だけが自動。
レベル2・・・加減速とハンドル操作が自動。ドライバーは常に監視が必要。
レベル3・・・限られた条件下で自動で走る。監視しなくても良いが、
       要求されたら運転交代する必要がある。
レベル4・・・限られた条件下で自動で走る。運転交代は要求されない。
レベル5・・・全てが自動。ドライバーが一切不要。
※ 実際の細かい表現は異なります。まずは概要を理解するための表現です

なんとなく、分かったような分からないような・・・と言う感じですね。
大きく2つに分けるとこうなります。

レベル0〜レベル2は運転支援

このうち、常にドライバーが操作もしくは注視をしていなければならないレベル0〜レベル2までは「運転支援」という位置付けになります。
運転支援の機能が作動していても、常にドライバーがクルマを運転し続ける必要があります。

レベル3〜レベル5が自動運転

レベル3〜5では、ドライバーはクルマを操作、また状況を注視しなければならない状態から一時的に、または常に開放されます。
これがいわゆる「自動運転」と定義されています。

さらに細かく理解するためには、3つのポイントをおさえる必要があります。
次で解説します。

ポイントは3つ〜

ポイントは3つ
自動運転のレベルを定義しているポイントはこの3つです。

  • 「監視」
  • 「交代」
  • 「条件限定」

それでは1つずつ解説していきます。

「監視」・・・レベル2|レベル3

1つ目のポイントは、ドライバーが常にクルマの状態を「監視」する必要があるか、という事です。
これはレベル2と3を分けているポイントです。

常に監視が必要
レベル2ではクルマが自動で走っていても、周囲の状況を注意しながら、クルマや周囲の状況を常に監視する必要があります。

監視は不要
レベル3〜5では、クルマが自動で走っている状態では、周囲の状態を監視する必要がなく、他のことをする事が可能です。

「交代」・・・レベル3|レベル4

クルマがドライバーに対し、運転交代することを要求するか否か?ということです。
これは、レベル3と4を分けているポイントです。

交代を要求する
レベル3の自動運転では、何らかの理由でクルマが
「あ、いま自動運転ちょっとムリだから運転代わって」
と要求する事があります。

そのため、映画を見ていても、スマホを見ていても、クルマがドライバーに交代を要求したら、ドライバーはそれに応じる必要があります。
自動運転とは言うものの、これではなかなか安心できないかもしれません。

交代を要求しない
レベル4、5の自動運転では、いかなる場合であってもドライバーに運転を要求する事がありません。

自動運転がつづくかぎり、運転や監視と言った状態から開放されるのです。
クルマを運転に任せて安心していられるのはレベル4以上といえそうですね。

「条件限定」・・・レベル4|レベル5

最後のポイントは「条件」が限定されているか否か、です。
これは自動運転のレベル4と5を分けているポイントです。

条件は限定しない
条件を全く問わず、全てのシチュエーションでクルマが自動で目的地まで走っていく。
これが究極の自動運転、これがレベル5です。

条件が限定されている
レベル4(およびレベル3)については、クルマが自動で走ることが可能な条件が限られています。
例えば「高速道路のみ」「渋滞時のみ」とか「限られた地域のみ」と言った感じです。

2020年現在の自動運転レベルは?

2020年現在の自動運転レベルは?

ここまで読んでいただいた方は、自動運転のレベルの違いが、何となく理解できたかと思います。

そうなると、いま街で見かけるクルマは一体どのレベルなの?
という疑問が浮かぶかもしれません。

本記事を書いている2020年1月現在、入手できるクルマの最高レベルは
自動運転レベル2です。

「自動運転」と定義されるのはレベル3以上、ということを書きました。
つまり、現時点で世の中に自動運転が可能なクルマは出てきていません
レベル3とかレベル4というキーワードを見かけるのは、実証実験を開始したとか、○○年に発売します、といったニュースである事が最近増えてきたためかと思います。

レベル2の初登場は15年以上前

自動運転レベル1のクルマが初めて登場したのは、20年以上前の1999年、メルセデス・Sクラスがアダプティブクルーズコントロールを搭載したのが最初と言われています。
※1・・・

その後、2004年にトヨタ・クラウンマジェスタがレーンキープアシストを搭載したのが最初のレベル2と言われています。

つまり、16年前に初めてレベル2が登場して以来、未だにレベル3が実現していないということになります。
もちろん、精度は熟成され、コストも格段に下がり、今では全てのラインナップがレベル2であるメーカーや、軽自動車までもがレベル2の機能が実装されてる例もあります。

自動運転の普及を妨げているものは?

普及を妨げているものは
では、なぜレベル3「自動運転」がなかなか実現しないのでしょうか?

メーカーの技術力不足?

各社の技術開発が追いついていないのでしょうか?
いいえ、そうではありません。
実は、2017年にフルモデルチェンジをしたアウディの旗艦モデルであるA8は、発売前から既にレベル3の実装を公式に打ち出していました。

Audi A8
引用元:アウディジャパン

この時点で、既にアウディは自動運転レベル3を量産できるくらいの技術力があるということになります。
もちろん、アウディができれば他のメーカーから追随して出てきてもおかしくはありません。
大きなメーカーであれば、およそ同等の技術力があると考えるのが自然でしょう。
では、なぜ実現しないのか?

自動運転普及の難しさ

結論から言うと、法律が整備されていないからです。
自動車という乗り物の歴史は100年以上昔のことです。
クルマの歴史がスタートしたのと同時に、ルールが作られて今に至りますが、クルマの動きは全てドライバーの操作に起因しますので、ドライバーの行動がルールとして定められて来たわけです。
「クルマをドライバーが運転しない」などという前提はどこの国の法律にも織り込まれているわけがありませんでした。
100年以上もの間、注意義務や違反などを定義してきた法律(日本でいう道路交通法)を「運転手がクルマを運転しない場合」という前提条件のもと、根底から作らなければならないと言うことです。
100年も続く法律を変えたり、新しく作るのはとても大変なことだということは想像に難くないですよね。

やっとのことでレベル3

それでも、今年2020年にやっとレベル3の法整備が整いそうです。
法規の話は長くなるので別の記事で解説しようと思いますが、自動運転に対応した道路交通法、道路運送車両法という2つの法改正が施行予定です。
これで日本の道でも自動運転のレベル3が初めて解禁になる見込みです。
しかし、上記で説明した通り、レベル3ではドライバーに対する運転交代の要求が想定されるため、本当にリラックスできるわけではなさそうです。
市場に初めて「自動運転車」が出てくる今年、どこのメーカーが出すのか?
どんな実力なのか?注目して見てみるのも面白いかもしれません。

それでは、良い1日を!